2021年の通常国会で廃案になった入管法案と同様の内容を政府が通常国会に提出する動きがあるとの報道を受けて、日本カトリック難民移住移動者委員会を含む7団体は、本日、入管法案の提出に反対する以下の声明を発表し、内閣総理大臣、法務大臣宛に送付しました。

 声明PDF

「STOP!長期収容」市民ネットワークHP(Open the Gate for All)
https://www.openthegateforall.org/2023/01/saiteisyutusaihantai.html

難民を虐げ、在留資格のない人の命を危うくする法案は、もうやめてください ——入管法改定案の再提出に反対します!

1 人道に反し、一昨年廃案になった入管法改定案の再提出・採決に反対します

政府が、2021年の通常国会で廃案になった入管法改定案とほぼ同じ内容の法案を、通常国会に提出をすることを目指しているとの報道がありました。
同法案は、多くの人の命や人権を脅かす、以下の重大な問題を含んでいます。

・ 低い難民認定率に改善策をとらない一方、難民申請者の送還を可能にし、迫害を受ける恐れがあるのに難民を本国に送り返す。
・ 送還忌避罪を創設し、帰国できない事情があるため在留を希望する人に刑罰を加える。
・ 監理措置制度により、在留資格のない外国人について、その監視を支援者らが引き受けない限り解放せず、無期限の長期収容制度を存続させる。
・ 在留特別許可制度の縮小と、問題のある判断要素の法定で、同制度による救済を狭める。

2021年には、当ネットワークが実施した反対署名に10万筆以上の賛同が集まり、反対の声はSNSやマスメディア報道でも広がりました。さらに、2021年3月に名古屋入管に収容されていた女性ウィシュマさんが亡くなる重大な事態に、入管庁が真相の隠蔽まで行ったことに、非難の声が高まりました。そうした状況を受け、廃案となったのです。
廃案後にも、ウィシュマさんが受けた非人道的な扱いを入管庁は隠蔽し続けて、実態に即した制度改善の議論を妨害していますが、入管収容の実態に対する多くの市民の怒りも続いています。また、ウクライナ難民の人たちに対して、多くの市民・企業などが援助を申し出て、難民排除が民意に反することが更に明らかになった一方、現行難民制度はひどすぎてウクライナ難民に利用させることができないことも明らかになりました。また、仮放免制度で収容を解かれた人たちが、健康保険加入を許されず、入管によって就労を禁じられ、暮らしや健康を破壊される深刻な事態が次第に注目され、国連からも改善を求める勧告が新たに出されましたが、このような人たちは、入管法改定案では救われません。
にもかかわらず、一昨年と同様の法案を提出することは、民意までないがしろにするものです。これ以上、移民、難民の人たちに対する非人道的な政策はやめてください。
わたしたちは、非人道的な収容による犠牲を繰り返させず、苦境にある難民等の人たちの排除をさせないために、入管法改定案の提出に反対します。

2.本当に「誰一人取り残さない」社会の実現をするために

わたしたち市民の日常は、人間同士のつながりによって成り立っています。外国人も、日本人も、難民も、移民も、在留資格がある人も、ない人も、同じ人間としてともに生きています。その実感があるからこそ、市民社会は共生を求めています。
私たちは、この社会に生きる一人一人の命と人権が保障され、誰もが安心して暮らすことのできる社会、本当に誰一人取り残されない社会を実現するために、以下のことを求めます。

(1)国籍にかかわらない共生のための法律や行政官庁を作ってください
(2)難民保護を目的とする法律と、独立した行政官庁を作ってください
(3)入管収容制度に、期間の上限・要件の限定、司法審査の導入をしてください
(4)仮放免中など在留資格のため審査中の人たちの生存権保障のため、就労・社会保障を可能にしてください。
(5)在留を希望する外国人に対して、人権の基準に沿って在留許可をしてください。

2023年1月17 日

公益社団法人 アムネスティ・インターナショナル日本
特定非営利活動法人 移住者と連帯する全国ネットワーク
全国難民弁護団連絡会議
日本カトリック難民移住移動者委員会
入管問題調査会
全件収容主義を闘う弁護士の会 ハマースミスの誓い
特定非営利活動法人 ヒューマンライツナウ