【各地の取り組み~国籍を越えた神の国をめざして】

東京教区 豊四季(とよしき)教会編〜「一致のしるし」としての馬小屋~

千葉県流山市にあるカトリック豊四季教会の信徒数は約1,700名で、外国籍の信徒も150名ほど在籍しています。長年この地域で生活しているフィリピンやペルーの方に加え、近年はスリランカやベトナム出身者が増えています。毎年待降節に入る直前の日曜日に、信徒たちが力を合わせて馬小屋つくりと、庭の飾りつけをしますが、今年は、国際色豊かな豊四季教会を象徴するような馬小屋が完成しました。

ベトナム出身の長嵜(ながさき)ホンさんは、結婚を機に2012年から日本で暮らし、家族で豊四季教会に通っています。彼女は昨年、家族とともに故郷ベトナムでクリスマスを過ごし、その時『日本で暮らすベトナム出身の信者仲間と共に、日本でベトナムの馬小屋を作りたい!!!』と、強く思ったそうです。そして日本に帰国する際、ベトナムから聖家族の像を持ち帰りました。
日本帰国後、その思いを立花神父に相談したところ、「来年のクリスマスに、取り入れましょう」と言われました。

それから一年後の2020年10月、ホンさんは改めて、「仲間とともに馬小屋をつくりたい」と申し入れました。
初めての取り組みだったこともあり、信徒の中には戸惑う声もありましたが、教会委員会での審議と承認を経てようやく、ベトナムコミュニティで馬小屋をつくることになりました。
イルミネーション担当者との打ち合わせを重ね、11月29日と12月2日、ベトナム出身者10名が集まって馬小屋を完成させました。

集まった10名は留学生や技能実習生として日本に滞在していて、普段は皆、仕事もしています。各々の休みを合わせるのも難しいため、2日でつくりあげるのだという、強い気持ちで取り組みました。

土台作りからはじまり、岩をイメージして白い土嚢袋をひとつずつスプレーで色付けする。園芸用のポールを曲げてドームをつくりシートを被せ、洞窟のようにつくりあげるなど・・とても手が掛かっています。一方で、飼い葉桶の藁は教会の敷地にある草を使うなど、調達できる材料を工夫して使うことも忘れませんでした。2日間、8時間ほどかけて素晴らしい馬小屋ができあがりました。

今回の馬小屋づくりに参加した、モさん(2010年から日本在住)は、「馬小屋づくりは、ホンさんやドックさんが声をかけてくれました。最初は、できるのかな?と不安でしたが、教会委員会も許可してくれて、みんなで協力して・・無事馬小屋が完成して本当に嬉しいです。ベトナムでは、待降節に子どもたちの勉強会があったり、みんなで歌ったり、踊ったり・・・「楽しみながら待つ気持ち」を表現します。今回、馬小屋をつくったことで、より一層「待つ気持ち」が盛り上がったように思います。」と、話してくださいました。


豊四季教会のベトナムコミュニティの皆さんと立花神父

馬小屋飾りについての感想
■信徒のみなさん
「馬小屋に灯る温はかい光、国を超えた神様への思いを共有できました。」
「ベトナムの方から、私達が皆で協力して作ったのです‼️と嬉しそうにプレゼピオの写真がラインで送られてきました。制作を依頼した教会委員会方達に拍手です。」
「ベトナムの方々が忙しい中、大きく美しい馬小屋を作ってくださいました。冬の夜にミサにくる私たちをお聖堂の入り口で暖かく迎えてくれます。」
「遠目でイルミネーションが大変綺麗だったので、先ずは、写真を1枚パチリ。馬小屋はパールの貝殻の中に作った様な本当に綺麗な色合いで、本当に写真を撮って良かったと思いました。」
「スリランカでも、とても大きな馬小屋を教会前に設置して沢山の電球でライトアップし盛大に作るので懐かしく思いました。」

■教会委員会メンバー
「教会委員会では今年、クリスマス飾りつけに、従来のお聖堂内の馬小屋に加え、ベトナムコミュニティによる手づくりの馬小屋を設置することを決定しました。いま、教会はいろいろな国の信徒の協力で支えられているという現状をあらわしていると思います。今年はコロナ禍で帰国できなかった皆さんが心を込めて作った洞窟の馬小屋からの灯りは、私たち見る者の心を和ませ、神様が下さった主の降誕というプレゼントに国籍の違いを越えて、ともに祈りあう喜びをかみしめています。」

■豊四季教会 立花昌和神父
「異国の地である日本に暮らす外国籍信徒の方々にとっては、クリスマスやイースターが近づく度に故国でのお祝いを想い出すことでしょう。同じ信仰を生きる仲間ですが、それぞれに習慣や伝統が違うことを感じます。お互いに尊敬し合い、尊重し合う気持ちが大事です。たかが馬小屋飾り、されど馬小屋飾りです。多様性における一致をあらわす「しるし」になるようにと願っています。」

「どこにいても、どんな馬小屋でも、国籍に関係なく。今年もキリストは誕生し、私たちを愛してくれる」

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1992年、日本カトリック司教協議会社会司教委員会は「国籍を越えた神の国をめざして」というメッセージを発表しました(2016年改訂)。当時、日本には外国人移住者が増えつつあった時期で、教会にも多くの外国籍信徒が訪ねるようになりました。日本人の信者は同じ信仰を持つ仲間が増えるこを喜ぶ一方で、異文化の受け入れにとまどいを感じていました。そのような状況の中でメッセージが発表され、日本の教会が難民移住移動者を友として受け入れ、その思いに寄り添うように呼びかけたのです。

それから25年以上がたち、外国人の置かれている状況は大きく変わってきました。国際結婚などで定住する人が増え、移住者の世代交代もすすむ中でリーマンショックが起こり、多くの人が帰国するという時もありました。近年は、政府が日本の労働力不足を補うため、外国人の受け入れ拡大の方針へ大きくかじを切ったこともあり、ベトナムやミャンマー等の若者が「技能実習生」として、日本各地で働いています。
日本の信徒が高齢化する中、ミサに参加するのはベトナムや、その他外国籍の若者たちが中心となっている教会も多いのではないでしょうか。それぞれの共同体における「国籍を越えた神の国」の実現を考えるきっかけにしていただきたいと思い、こちらのコーナーでは、全国の教会の「いま」とその取り組みについてお伝えしていきます。