【各地の取り組み~国籍を越えた神の国をめざして】

大阪教区社会活動センター(シナピス)編〜誰もが必要とされる居場所づくり~

今回は、大阪教区の社会活動を結集させた組織である「シナピス」の活動をご紹介します。

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2020年12月2日、大阪市生野区の閑静な住宅地の一角に「シナピスホーム」が開所しました。
この建物はもともと、韓国殉教福者修道女会の修道院でしたが、このたび大阪教区が借り受けたものをシナピスが使わせていただくことになりました。しばらく使われていなかった建物を、シナピスのスタッフと難民移住者が10月から2か月かけてきれいに掃除し、その過程で地域の方々とも交流を深めてきました。

オープンと同時に難民移住者が地域の方々をもてなす「おとしより食堂」を始める予定でしたが、新型コロナ感染症の第三波と重なってしまったため、しばらくは食堂ではなく、カフェを週に一度開くことにしました。
 
おもてなしをさせていただくのは、難民申請者やさまざまな理由で在留資格が認められない人びとです。自立したい、社会の役に立ちたいと強く願っても、働くことが禁じられているためままなりません。
また、さまざまな排除に直面する中で孤独や疎外感を深めていく人もいます。通常はみなさまからいただいたご寄付で生活を支援し、そのお礼として教会内で奉仕活動をしています。今年の5月~9月にかけては医療用の使い捨て防護ガウンを作り、医療・介護期間に寄付するプロジェクトにも参加しました。この時、本人たちが望んでいるのが何よりも社会貢献であることを改めて確認し、介護福祉士の資格を持つスタッフの発案により、地域住民の助けとなり、難民移住者が心を込めて奉仕することのできる「おとしより食堂」を始めることにしました。
 
 オープニングに先立ち、生野教会からかけつけてくださった中谷功神父、佐藤達郎修道士とともにミサを捧げ、シナピスホームがすべての人にとって温かい憩いの場となるように祈りました。

この日の様子は12月3日に朝日放送のニュースでも放映されました。その直後から、ご寄付やボランティアの申し出、ご自身も寂しい思いをしている、シナピスホームの近くに引っ越したいなどの電話が次々と寄せられています。ゆくゆくは、電球の付け替え、清掃、買い物の付き添いなど、介護保険ではまかなえない地域の方のちょっとした困りごとをお手伝いしながら、少しずつ地域に馴染んでいきたいと思います。そして、シナピスホームでの出会いを通じて、誰もが必要とされ、大切にされる居場所を作ることに貢献できたらと願っています。
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新型コロナ感染症の拡大により、当初の予定を変更しなければならない状況が続いていますが、担当の山田直保子さんはホームの今後について、
「現在、緊急事態宣言が出ている為、2月までカフェは休業しております。再開時にはカフェを通して地域住民と難民移住者が交流を持ち、お困りごとや悩みを解決できるように、みんなで相談しあえるような環境にしたいです。春くらいには食堂を始め、難民移住者の皆さんの自国の料理をふるまったり、高齢者の食べやすい形態の食事提供を考えています。」と話してくださいました。

アッバス・ヤズダニさん(イラン出身)はおとしより食堂の活動について、
「楽しみです。お年寄りの話たくさん聞きたい。日本語の勉強になる。重いお米を買いに行ったり、掃除したり助けたい」と、期待に胸をふくらませています。
関わる人がみな笑顔になる本取り組み….今後の展開が楽しみです。

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1992年、日本カトリック司教協議会社会司教委員会は「国籍を越えた神の国をめざして」というメッセージを発表しました(2016年改訂)。当時、日本には外国人移住者が増えつつあった時期で、教会にも多くの外国籍信徒が訪ねるようになりました。日本人の信者は同じ信仰を持つ仲間が増えることを喜ぶ一方で、異文化の受け入れにとまどいを感じていました。そのような状況の中でメッセージが発表され、日本の教会が難民移住移動者を友として受け入れ、その思いに寄り添うように呼びかけたのです。
それから25年以上がたち、外国人の置かれている状況は大きく変わってきました。国際結婚などで定住する人が増え、移住者の世代交代もすすむ中でリーマンショックが起こり、多くの人が帰国するという時もありました。近年は、政府が日本の労働力不足を補うため、外国人の受け入れ拡大の方針へ大きくかじを切ったこともあり、ベトナムやミャンマー等の若者が「技能実習生」として、日本各地で働いています。
日本の信徒が高齢化する中、ミサに参加するのはベトナムや、その他外国籍の若者たちが中心となっている教会も多いのではないでしょうか。それぞれの共同体における「国籍を越えた神の国」の実現を考えるきっかけにしていただきたいと思い、こちらのコーナーでは、全国の教会の「いま」とその取り組みについてお伝えしていきます。