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第10回 管理と排除の「入管マインド」

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日本にはさまざまな事情で暮らす、いわゆる「非正規滞在の外国人」が大勢いる。しかし、日本政府は彼らの個別の事情を考慮せず、既に「出入国管理及び難民認定法」(入管法)上の退去強制令書が出ていることを根拠に、法務省・出入国在留管理庁(以下・入管)の収容施設に無期限で長期収容したり、強制送還を行ったりしている。「非正規滞在の外国人」への人権侵害を考えるシリーズ第10回は、入管元職員で、現在、入管問題救援センターを主宰する木下洋一さん。

 木下さんは、入国審査官として18年間、入管に勤務した。しかし、木下さんは入管行政に疑問を感じ、1年前に入管を早期退職し、入管問題救援センターを立ち上げた。入管問題や外国人の人権問題についての講演・セミナー・勉強会を開催するほか、相談業務や情報発信活動も行っている。
 「僕が入管を辞めて、入管問題について声を上げることに関しては、『勇気がありますね』と言われることがあります。でも私に真の勇気があったら、入管に残って、上司や同僚との摩擦や議論を恐れずに疑問点を発信し、入管の中で改善していたはずだと思っているのですが…」

人権侵害続く中で

 日本の難民認定率は1%未満と極端に低い。「難民だと思われる」難民性が非常に高い場合でも難民認定されず、入管収容施設に長期で無期限の収容を強いられるケースも少なくない。中には母国に帰ると命の危険が高いとされる者でも、強制送還されるケースも出ている。日本人と結婚しても配偶者ビザがもらえないケース、非正規滞在の親子を引き離し、子どもに在留資格を与える代わりに親を強制送還するケースもある。
 こうした人権を無視した、非人道的な入管行政がなぜ続いているのか。いったい誰が命令・指示しているのだろうか。木下さんはこう答える。
 「私の感覚では、こうした入管業務の在り方について疑問を感じている入管職員はたくさんいるように思います。個々の入管職員は有能で、外国人の人権について、より配慮が必要だと感じている者も多い。それにもかかわらず、入管行政に『人権の視座』が欠けてしまうのは、入管全体に漂う独特の〝空気感〟があるからです。僕はそれを、『入管マインド』と名付けてみました」
 国連の「難民条約」は、難民である可能性がある者を確実に保護するというのがその精神だ。しかし、日本の入管は、「難民を偽装する者を1人たりとも入国させない」ということに基点を置いている。つまり、難民認定申請者なら、まず全員に対して「偽装難民」かどうかを疑う。国際結婚の場合には、「偽装結婚」かを疑うのである。このように「保護すべき人を保護すること」よりも、まず〝真偽〟がどうかが第一義で、それ故に「排除」に力点が置かれていくのだ。こうした組織の風土が、「入管マインド」として存在しているのだと木下さんは言う。
 その「入管マインド」は、責任の所在がはっきりしない。しかし、多くの入管職員が疑問に感じながらも、組織人としてこの「入管マインド」に屈服せざるを得ない〝空気感〟が入管全体を包み込んでいるのだという。
 
入管の広い裁量権
 
そして、この「入管マインド」は、入管制度の立て付け(構造)によって支えられているのだという。
 実は木下さん自身も、「入管マインド」について特に疑問を持つことなく業務に従事していた。しかし、2016年、横浜入管の審査部門に移ったことが、転機となった。「非正規滞在の外国人」に、「日本にいなければならない理由」についてインタビューをする中で、それぞれに個別の事情があるということを身をもって知ったのだ。
 「親が非正規滞在の場合、子どもも大抵、非正規滞在なので、退去強制手続の対象になります。そのような中、『小学生なら母国に帰ってもやっていける』と、退去強制となる子どもたちの姿を目の当たりにし、言いようもない理不尽さを感じました。子どもは一度も母国に行ったことがない。小学生とはいえ、自我と人格をもって育ち、日本語で物事を考え、日本文化に慣れ親しんで生きてきた。その子どもに対して在留特別許可を与えず、入管側が一方的に『退去が相当である』と判断を下す。そもそも入管自身にその判断能力があるのかどうかが疑問です」
 木下さんは、強制送還が子どもたちに与える影響について、本来ならば発達心理学や医学、言語学など専門的な視点で検討することが必要で、その上で慎重な判断を行うのが「入管行政のあるべき姿」だと考える。
 しかし、現行制度では、収容から送還まで入管だけで判断し、司法や第三者機関がコミット(関与)しない。しかも、入管には広範な裁量権が認められている。にもかかわらず、裁量判断にかかる基準もなく、自らの判断の正当性や妥当性を第三者によって客観的にチェックできる仕組みもない。
 こうした入管の「不透明性」が人権侵害を生み、その〝闇〟がどんどん「ブラックボックス化」していくと、木下さんは考えている。

 入管制度の骨格は終戦後のポツダム政令が基になっているという。それまで日本国籍を強いられ、「日本人」にさせられていた朝鮮半島などの人々が、戦後、突然、「外国人」にさせられた。そうした人々を、いかに管理・送還するかという処遇の発端になった法令だ。
 「現行入管法は、ポツダム政令の理念をそのまま引きずっています。基本となる条文は、戦後75年たった今も一字一句変わっていない。そこから生じてきたのが、『入管マインド』です。外国人を『管理の対象』としてしか見ていないのです。入管システムに大きな欠陥があるのに、いや、欠陥があるからこそ、入管が〝王様〟のように君臨している。これは入管自身にとっても不幸なことです。入管の〝暴走〟を防止するシステムが不可欠で、今こそ、私たちは声を上げなければいけないのです」
 法務省は、今秋の臨時国会で、外国人への管理をさらに強化・厳罰化する入管法〝改正〟案を提出する可能性が高い。そうした動きについて、木下さんは7月1日、声明を発表している
https://www.im-res9.com)。

元入国審査官の木下洋一さん

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