日本カトリック難民移住移動者委員会(J-CaRM)は福音に基づいて、多民族・多文化・多国籍共生の社会をめざしています。

第25回 入管問題専用ポータルサイト

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(カトリック新聞2021年2月14日号掲載)
 日本にはさまざまな事情で暮らす、いわゆる「非正規滞在の外国人」が大勢いる。しかし、日本政府は彼らの個別の事情を考慮せず、既に「出入国管理及び難民認定法」(入管法)上の退去強制令書が出ていることを根拠に、法務省・出入国在留管理庁(以下・入管)の収容施設に無期限で長期収容したり、帰れない重い事情のある者たちの強制送還を行ったりしている。「非正規滞在の外国人」に対する、人権侵害を考えるシリーズ第25回は、日本カトリック難民移住移動者委員会(委員長・松浦悟郎司教)など、八つの市民団体が作成したポータルサイトを紹介する。

 ポータルサイトとは、インターネット上のさまざまな情報につながるための「入り口」(ポータル)となる巨大ウェブサイトのことだ。
 昨年9月末に公開され、このほどリニューアルされた「Open the Gate for All(オープン ザ ゲート フォー オール)」https://www.openthegateforall.orgは、「排除」の方向に入管法を変更しようとする、現在の日本政府の動きをストップさせ、1人でも多くの人が〝在留資格のない難民〟たちに関心を持ってもらう目的で開設された。
 スローガンともいえる、英語のサイト名には、「国境を越えて、日本社会をあらゆる人々に広く開いていこう」との思いが込められている。
 日本は難民条約に加入(1981年)しているが、今こん入管法改定案には、「保護」や「共生」をうたう難民条約の国際基準に逆行する、「排除」や「管理」を強化する正反対の内容が盛りだくさんなのだ。

入管法改定案は2月に閣議決定か

 そして今、入管法改定案は、今期の通常国会において2月中にも閣議決定される可能性が高まってきたといわれる。
 母国での迫害から逃れて、日本に保護を求めてやってきた多くの「難民」たち。難民認定申請者のわずか0.4%しか難民認定していない入管(日本政府)。〝鎖国〟とも呼べる、厳しい取り締まりを継続してきたにもかかわらず、さらなる引き締めを行うというのである。
 改定案には、①難民申請中の者でも強制送還ができるようにする「送還停止効の一部停止」や、②母国への強制送還を拒否する者に刑罰を与える「送還忌避(きひ)罪」(仮称)等々、難民認定申請者たちを、まさに「死」に追いやるのが目的なのかと思わせるような内容なのだ。
 そもそも、この入管法改定案は昨秋の国会に上程されるはずだった。そして、世論が高まらないその切羽詰まった状況の中、日本カトリック難民移住移動者委員会(略称J―CaRM〈ジェイカーム〉)など8団体が、一昨年10月に「STOP(ストップ)!長期収容」市民ネットワーク(以下・「市民ネットワーク」)を結成。在留外国人が直面する問題を知る人が少ない日本社会の中で、入管法改定案に反対する世論を高めようと、昨年9月末にポータルサイトを立ち上げ、今回リニューアルしてポータルサイトを公開、広く市民に支援を訴えているのだ。
 サイトを公開した八つの市民団体には、J―CaRMの他、①アムネスティ・インターナショナル日本②移住者と連帯する全国ネットワーク(以下・移住連)③全国難民弁護団連絡会議④難民支援協会⑤入管問題調査会⑥全件収容主義と闘う弁護士の会 ハマースミスの誓い⑦ヒューマンライツ・ナウ(50音順)が加わっている。
 「市民ネットワーク」結成の背景を、J―CaRM定例委員で、移住連事務局長を務める山岸素子さんはこう語る。
 「約2年前、大村入国管理センター(長崎)の被収容者が、長期収容に抗議してハンガーストライキをしていて餓死した事件をきっかけに、入管法改定の動きが出てきたのです。一方、私たち8団体もこの事件をきっかけに、入管施設での長期収容問題等について、広く市民社会に知らせていこうと、ネットワーク会議を持つようになり、セミナーの開催など具体的な行動を起こすようになったのです」

日本の「難民」の実情を知らせる

 今回のポータルサイトには、「人権の視点から、長期収容や送還等の課題解決を検討・提言する」お薦めの記事や最新情報も掲載。
 サイトを開くと、まず「市民ネットワーク」参加団体からのお知らせが流れてくる。在留資格のない難民認定申請者らが入管施設で長期収容されている問題についてのウェブセミナーの動画や、初心者向けの「Q&A」などがある。
 「Q&A」の内容は、「退去強制」「在留資格」「収容」「仮放免(かりほうめん)(注)」等についての基本的な用語説明をはじめ、「収容所って、要するに外国人向けの刑務所ですよね?」などといった、一般市民の誤解、偏見を是正するための分かりやすい解説。
 また、「国外退去(退去強制)が出されているのに、なぜ自分の国に帰らないの?」といった、疑問・質問については、まず「帰らないというより、帰れない理由かあるから」だと諭す。そして、母国で命の危険がある人々(難民認定申請者)や、日本に家族がいる移住者など4例を挙げて、彼らの実情を説明していく。
 このほか、コンテンツ(情報の中身)としては、最近の国会の動向や、支援団体が発表した声明、当事者の声、お薦めのYouTube(ユーチューブ)ビデオリストなど、各種テーマで情報を得ることができる。
 「サイトは、初心者から専門家までが使える豊富な内容になっています。テーマをどんどん掘り下げていくと、弁護士会のサイトなどにもつながっていくので、入管法改定案の方向性や、マニアックな内容も知ることができます。専門家の方も納得できる仕上がり
になっていると思います」(山岸さん)

市民、国会議員、弁護士らの連携で

 入管法改定案は、今年4月か5月に国会で審議されると見られている。この改定案については、超党派の議員で構成される「難民問題に関する議員懇談会」(石橋通宏〈みちひろ〉会長)が国際基準に基づいて「対案」を作成しているが、「市民ネットワーク」も全面協力したと言う。
 弁護士、国会議員、マスコミ、市民団体等がそれぞれの立場でできることを始めている中で、今、市民一人一人にできることは何だろうか。山岸さんはこう強調した。
 「まず、この社会の中で今、命や生活の危機にさらされている仮放免中の難民認定申請者らを物心両面で支えることです。コロナ禍の中で彼らの支援に関わっている個人・団体もいろいろな困難を抱えているのが現状です。この入管の長期収容や強制送還の問題を知った方にお願いします。ぜひ、友人など周囲の人に伝えてください。一人でも多くの人がこの入管問題を知り、声を上げていくことが、入管法改定案に反対する世論の形成につながっていくと考えているからです」

 【注】「仮放免」とは、「非正規滞在」となった外国人に対して、入管が入管収容施設の外での生活を認める制度。就労は禁止され、国民健康保険にも加入することができないため、生活費や医療費がなく、心身の健康を害することになる。

入管問題専用ポータルサイト「Open the Gate for All(オープン ザ ゲート フォー オール)」の1ページ

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