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第43回 「命」と「命」の支え合い

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㊸ 「命」と「命」の支え合い
(カトリック新聞 2021年9月12日号掲載)

日本にはさまざまな事情で暮らす、いわゆる「非正規滞在の外国人」が大勢いる。しかし、日本政府は彼らの個別の事情を考慮せず、既に「出入国管理及び難民認定法」(入管法)上の退去強制令書が出ていることを根拠に、法務省・出入国在留管理庁(以下・入管)の収容施設に無期限で長期収容したり、帰れない重い事情のある者たちの強制送還を行ったりしている。「非正規滞在の外国人」に対する、人権侵害を考えるシリーズ第43回は、本紙最終面掲載のシリーズ「キリスト者のための対話法 後編」の執筆者、小野恭世(やすよ)修道女(イエズス孝女(こうじょ)会)が1年前に立ち上げた難民認定申請者等を支える「ともだち基金」(本紙202011月1日付3面紹介)のその後について。

「ともだち基金」は、在留資格のない難民認定申請者等の生活困窮状態を本連載等で知った小野修道女が昨年7月に創設したものだ。自身がカトリック・テレビ番組「心のともしび」に出演した際の全24話を収めたDVD『自分を深く知るために』の売上の一部(1枚につき1500円)を基に基金を始動。昨年7月から今年8月末までの約1年間で、230枚のDVDの注文と、さらに61人から合計87回の寄付があったという。
これらの支援金を難民認定申請者等に届ける役割は、小野修道女が専属カウンセラーを務める神奈川県内のカトリック系外国人支援団体(以下「支援団体」)が担い、そのネットワークを使いながら、主に関東地域に散在する難民認定申請者等の生活支援と心のケアを継続してきた。

6カ月間公園の水を

「ともだち基金」で救われたと言うのはナイジェリア人の難民認定申請中の6人家族。新型コロナウイルスの感染が拡大する前は、米国人牧師に生活全般を支えてもらっていたが、コロナ禍の中でその牧師が帰国。6人家族は路頭に迷ってしまったという。4人の子どもを抱えるその家族の父親Aさんはこう話す。
「1年間、水道代が払えず、とうとう水道が止められてしまいました。6カ月間、夜中に近くの公園まで何度も水をくみに行って、料理や飲み水に使い、またその水をやかんで沸かして、風呂おけに入れ、体を洗っていました」
小学生の子どもたちは「なんで水が出ないの? なんで?」と聞いてくる。それでも、Aさんはちゃんと答えられない。自分たち家族が難民であること、そして在留資格がないこと、また働くことが許されない「仮放免」(入管収容施設の外での生活)状態であることなど、子どもには理解できるはずもなく、「父親として本当に苦しかった」と話す。
そんな時に、「ともだち基金」に出合い、水道代、またガス代や生活費の支援を受け、子どもたちも十分な食事が取れるようになったと言う。
「基金を通して助けてくださった皆様は私たちにとって家族です。神様の存在を感じています」とAさんは感謝の気持ちをそう表現していた。

日本社会に放り出される

またカメルーン人の難民認定申請者Bさんは、日本の空港で難民として保護を求めたところ、そのまま入管施設に収容されてしまったという。1年半後に「仮放免」が認められ、入管施設の外に出られたものの、日本社会の中で過ごす初めての冬。布団や厚手の冬服も持っていない、着の身着のまま〝放り出されて〟しまったのだ。
その時、Bさんを救ったのも「ともだち基金」だった。
「支援団体」が毛布や冬のジャケットを購入して提供。また母国の紛争で家族を失い天涯孤独のBさんと一緒に散歩をしたり、食事をするなどして励ました。今も〝家族〟としての交わりが続いている。
「日本に友達も知り合いもいなくて、日本文化も分からない僕は、『ともだち基金』に出合っていなければ、どう生きていいのかも分からなかった。基金で支えてくださる皆様は僕の家族です。今は、『仮放免』の身で働くことができず、つらい毎日ですが、僕の家族になってくれる皆様がいるので幸せです。希望を持って生きようと思います」とBさんも心からの感謝の気持ちを表す。
彼らはほんの一例だが、1年間で「ともだち基金」につながった難民認定申請者等は、イラン、トルコ、パキスタン、コンゴ民主共和国など10カ国の37人(今年8月末時点)に上る。そしてこの中には、AさんやBさんのような「仮放免」の人々だけではなく、東日本入国管理センター(茨城県牛久市)や東京出入国在留管理局(以下・東京入管/東京都港区)に収容されている人々もいる。
その一人がCさんだ。

入管でコロナ感染

東京入管に収容されていたイラン人難民認定申請者のCさんは、収容中に新型コロナウイルスに感染したというが、感染者たちは共同部屋に入れられたまま、医療放置の状態にされたというのだ。
Cさんはこう振り返る。
「喉に痛みがあり、固形物が食べられない状況でも、スープなどの流動食の提供はありませんでした。外の病院にも連れて行ってもらえない。入管の中でも治療が受けられない。食べ物もない。このまま死ぬかもしれないと思い、本当に怖かった。財布には500円しかなく、僕は本当に困っていました」
東京入管では、外部からの食料品の差し入れが禁止されているため、面会活動をしている「支援団体」は、Cさんに「ともだち基金」から支援金を届けることにした。それにより、Cさんは入管内の売店で、やっとインスタントスープ等を購入することができ、栄養補給をして、なんとか切り抜けたという。
その他、「ともだち基金」では、「支援団体」を通じて、公園でホームレス生活を余儀なくされていた「仮放免」の人の生活支援、電話がなく外部との連絡手段がない「仮放免」の人々への通信機器の貸し出し・提供、また病院への同行支援と医療費の提供なども行っている。
「仮放免」では、①就労の禁止(生活費がない)②国民健康保険に入れない(医療につながれない)など、人間として〝普通に〟生きることができない。基金に寄せられた善意の輪は、こうした「仮放免」状態にある一人一人の命を支えるための日々のニーズ(必要)に応じた支援を可能にしているのだ。
小野修道女は「ともだち基金」で一番大切にしていることを、次のように話す。
「『ともだち基金』は〝支援する人〟と〝支援される人〟の交流ではなく、対等な『命』と『命』の支え合いです。難民認定申請者の中には〝支援される〟だけでなく、それぞれの豊かな能力を生かして、外国にルーツがある子どもたちへの学習支援に参加する人、またホームレスの炊き出しなどのボランティア活動に加わって、社会の中で困っている人を支えている人もいるのです。そうした社会参加のために『ともだち基金』では、交通費の支援もしています」
小野修道女は、年金や生活費を削って「ともだち基金」を支えてくれている支援者一人一人に深い感謝の気持ちを感じながら、また同時に難民認定申請者等の存在が、支援者の信仰に影響を与えていることも感じ取っている。
互いに支え合って生きる。このつながりこそが、「教会」(エクレシア=呼び集められた民)共同体の本来の姿なのではないかと、小野修道女は話していた。
小野修道女の連絡先は〒240・0112神奈川県三浦郡葉山町堀内1968 イエズス孝女会 葉山修道院。

写真=生活に困窮する難民認定申請者が、支えてくれる人々への感謝の気持ちを込めて作るしおりや置物(紙製)

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