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第31回 入管法改定「政府案」に国連が懸念表明

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㉛ 入管法改定「政府案」に国連が懸念表明
(カトリック新聞 2021年4月18日号掲載)
日本にはさまざまな事情で暮らす、いわゆる「非正規滞在の外国人」が大勢いる。しかし、日本政府は彼らの個別の事情を考慮せず、既に「出入国管理及び難民認定法」(入管法)上の退去強制令書が出ていることを根拠に、法務省・出入国在留管理庁(以下・入管)の収容施設に無期限で長期収容したり、帰れない重い事情のある者たちの強制送還を行ったりしている。「非正規滞在の外国人」に対する、人権侵害を考えるシリーズ第31回は、間もなく国会で審議予定の入管法改定案の「政府案」(閣法)について、国連人権理事会の専門家が懸念を表明する「共同書簡」を日本政府に送ったことについて。

母国で迫害の恐れがあるなど、「母国に帰れない事情」を抱えた難民認定申請者等を強制送還したりすることを可能にする入管法改定案の「政府案」について、国会審議が間もなく始まる。
「戦後最悪の入管法改定案」と称されるこの「政府案」を廃案に追い込もうと2019年秋から、日本国内では弁護士や市民団体らが〝入管法改悪〟に反対する声を上げ、全国各地の弁護士会からも「政府案」に異議を唱える会長声明が出されている。
そして国会審議を目前に控えた今年3月下旬には、国際社会からも「政府案は国際法違反」と非難する文書が公表され始めているのだ。

 人権基準に満たぬ「政府案」

3月31日、国連人権理事会の専門家らは連名で、「政府案」が国際人権基準を満たしていない「国際人権法違反」に当たるとして懸念を表明、その懸念点について対話を求める「共同書簡」を日本政府に送付した。
「共同書簡」の骨子は以下の5項目。
①「政府案」では、「非正規滞在の外国人」を「原則」として「収容」することが前提となっていて、入管の主任審査官の裁量により「収容しない」ケースは例外にすぎないという点で、自由権規約9条に違反する。
②「非正規滞在の外国人」を入管施設に収容する上で、司法審査がないことは、自由権規約9条4項の違反。
③入管施設での収容期間に上限が定められていないことについて、自由権規約9条に違反する。また日本政府が続けている「無期限収容」は拷問および虐待に当たり得る。
④難民条約には難民等を追放・送還してはならないという「ノン・ルフールマン原則」がある。それにもかかわらず、3回以上難民認定申請をした者等について母国に送還できるようにする「政府案」は、送還後に生命や権利が脅かされる可能性があり、自由権規約7条、拷問等禁止条約3条、強制失踪条約16条に違反する恐れがある。
⑤出入国管理においても、「子どもの最善の利益」を念頭に置くことが求められる。子どもとその家族について原則として収容しないこと、収容期間の上限を法律で明記すべきこと。

国際水準に近付ける義務

「共同書簡」はこれらの国際法違反を指摘しながら、日本政府からの「回答を待つ間、(日本政府には)侵害行為を停止し、再発防止のために必要な暫定的な措置が取られること」を強く求めると結んでいる。
日本政府はこれまでも国連からの度々の勧告を無視し続け、今回の「共同書簡」についても、上川陽子法務大臣は4月6日、〝事実誤認〟だという立場を示している。日本では法務省も、入管も、裁判所も、国際法の〝重要度〟をあまり理解していないように見えるのだ。
優先順位は、第1が「憲法」、第2が「国際法」、第3が「法律」だ。この大原則に従って、難民条約や人権条約に加入している日本は、それらの国際法に合わせて、入管法を〝改悪〟ではなく、〝改正〟する義務がある。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)も4月9日、「政府案」に対する見解を42㌻にわたる文書で示し、全面的に〝ダメ出し〟をしている。また現行の入管法についてさえ、米国の国務省は3月30日に公表した「2020年人権報告書」の中で、日本の難民認定率の低さに言及し、入管施設での長期収容問題についての懸念を記している。
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)のウェブサイトでも公開されているこの「共同書簡」は、国連人権理事会の「恣意(しい)的拘禁作業部会」(以下「作業部会」)と、人権に関する専門家「特別報告者」3人が作成したもの。
3人の「特別報告者」は、①「移住者の人権」②「宗教または信条の自由」③「拷問等」の各分野の人権問題に精通する国際レベルの「筋金入りの専門家」。そして「作業部会」は、国際人権基準に合致しない各国の人権状況を監視し、人権侵害防止を行うシステムのことだ。
国内では、4月6日に日本の国際NGO(非政府組織)ヒューマンライツ・ナウら4団体が、東京・参議院議員会館で緊急記者会見を開き、英国エセックス大学ヒューマンライツ・センターの藤田早苗さんが「共同書簡」の意義についてこう説明した。
「『特別報告者』は日本を含む47の人権理事会の理事国によって任命された個人資格の独立した専門家で、その制度の権限は、国連憲章に根拠があります。『特別報告者』の勧告は、国連加盟国がその国内法や制度を国際人権基準に見合った内容にするのを助けるもの。『特別報告者』を尊重し、それに協力しないと、国連憲章に反するということになります」

国会審議の前に建設的な対話を

つまり、日本も人権条約等に加入しているため、国際法に即して国内法を整備する義務を負っているということだ。藤田さんによれば、人権条約に反する今回の「政府案」は改正、または廃止されなければならず、日本政府は、「特別報告者」からの質問にきちんと回答し、建設的な対話を行い、それを市民に公開する義務を負っている。
「そういう適切な手続きを取らずに、国会で審議を進めることがあってはならない」と藤田さんは強調していたが、その懸念が拭い切れないのが現状なのである。

写真=国連人権理事会の専門家が「政府案」への懸念を表明したことを受け、全国難民弁護団連絡会議等4団体が4月6日に緊急記者会見で、その意義を説明

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