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第3回 機能不全の難民認定制度と強制送還


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第3回 機能不全の難民認定制度と強制送還

日本にはさまざまな事情で暮らす、いわゆる「非正規滞在の外国人」が大勢いる。しかし、日本政府は彼らの個別の事情を考慮せず、既に「出入国管理及び難民認定法」(入管法)上の退去強制令書(退令)が出ていることを根拠に、法務省・出入国在留管理庁(以下・入管)の収容施設に無期限で長期収容したり、強制送還を行ったりしている。「非正規滞在の外国人」への人権侵害を考えるシリーズ第3回は、難民認定申請中のアフシンさん。
 イラン人のアフシンさん(53)は来日30年になる。現在、4回目の難民申請をしているが、過去3回はいずれも不認定。母国イランに戻れば、いのちの危険があるが、日本政府は、アフシンさんを保護しようとはしない。
 
反政府組織で活動

 革命家だったアフシンさんは、イラン・イスラーム体制に反発して、13歳の時に国内最大の反政府組織「ムジャヒディーン・ハルク・オーガニゼーション」(MEK)に参加、政府批判の機関紙の配達などを行っていた。アフシンさんは目立つ存在で、体制組織から暴行を受け、また銃殺されそうになったこともある。
 高校2年生の時、ある教師から「お前の尻尾をつかんでやる」と言われ、命の危険を感じて学校を中退。逃亡生活をしながら〝地下活動〟を続けた。16歳の恋人は政治犯として死刑になり、姉家族は亡命先のオーストリアに行く途中、交通事故で亡くなった。
 将来への絶望感から1990年、アフシンさんは国外脱出を決意し、入国しやすい日本を避難先に選んだ。しかし、今度はその日本の「外国人政策」に翻弄されることになった。
 「成田空港での入国審査の時、15日間の短期ビザをもらったけど延長申請日は年末だった。手続きができず、そのままオーバーステイ(超過滞在)になってしまったのです」
 NPO(特定非営利活動)法人移住者と連帯する全国ネットワークの鳥井一平代表理事によれば、日本政府は1980年代以降、オーバーステイの人々を「労働力」として使っていた。そして「労働力」が必要なくなれば、彼らを〝不法滞在〟だとして摘発し、母国へ強制送還。オーバーステイの人たちを、「雇用の調整弁」として利用していたという。
 アフシンさんは2001年、退去強制令書が出され、茨城県牛久市にある東日本入国管理センターに収容された。在日30年間で、入管収容施設での3度の長期収容、行政訴訟、複数回の難民認定申請を体験してきたが、最も恐れているのは、母国への強制送還だ。

 強制送還は死刑

 「俺が入管に収容されていた4年間に週2回、強制送還がありました。人間はいつか必ず死ぬと分かっていても、目の前で強制送還されていく人を見て、死の恐怖におびえました」
 しかし、退令取消を求めて最高裁判所に上告中にもかかわらず、アフシンさんに強制送還の日が訪れた。成田空港で、入管職員は「(あなたの)荷物は飛行機に乗せたので、あとは(あなたが)乗るだけです」と軽く言った。しかし、その荷物こそが、アフシンさんが反政府組織MEKのメンバーであったことを証明する資料が入っている危険なもので、イラン政府の手に渡れば、命の保証はない。
 飛行機に無理矢理、搭乗させられそうになったその時に、アフシンさんは激しく抵抗した。頭を強く打って大けがを負い、血だらけになった。機長は、重傷者の搭乗を拒否。強制送還は未遂に終わった。しかし、それが入管との新たな闘いの始まりとなった。
 その後、入管収容施設外での生活ができる「仮放免」が認められたアフシンさんだったが、ある日、ばったり遭遇した強制送還未遂事件当時の責任者(入管職員)は「お前を強制送還するのが、入管のメンツだ」と言い放ったのだ。
 アフシンさんは、しみじみとこう話す。
 「難民認定申請の時、迫害された物的証拠がないと、日本では難民として認めてもらえません。でも、俺が銃で殺されそうになった写真なんて、どうやって撮ることができるのですか? 俺には、MEKのメンバーだったという書類や、フランスに亡命した元イラン大統領が書いてくれた手紙もある。でも、どんな物的証拠を提出しても、難民認定はしてもらえません。強制送還未遂の恨みなのでしょうか」

 難民保護の強化を

 現在、アフシンさんは、強制送還未遂の直後に発症したPTSD(心的外傷後ストレス障害)や遷延性うつ病、また入管収容や「仮放免」生活のストレスから心房細動・慢性心不全を患っている。
 緊急の心臓手術を必要とするアフシンさんだが、在留資格がなく医療制度への加入が認められないため、手術には810万円かかるという。「仮放免」中のため労働も禁止されていて、収入は皆無。せめて、治療のために「特定活動」の在留資格が下りれば、手術費は10万円程度で済む。そのため、手術を目的とした在留資格の申請をしているが、入管からの回答はいまだにない。
 「ある日本人が俺を養子にしてくれた。でも養子縁組をしても日本国籍はもらえない。何をやってもダメ。日本が難民条約から外れてくれたら、他の国に俺も保護を求めることができるのに。退去強制命令を出した入管に、俺が難民申請をするなんて、『不認定ありき』の茶番劇です。まるで日本政府は俺がここで死ぬのを待っているみたいです」
 日本は難民条約の締約国だが、難民認定率は0・3%(2018年度)と極端に低い。こうした状況にありながらも、日本政府は昨年、法務省に「収容・送還に関する専門部会」を立ち上げ、①難民申請中の者でも強制送還できる、あるいは②難民申請の乱用と入管が判断した場合にその申請を簡易却下し、強制送還できる―ように、現在、法律を変えようとしている。2月25日、東京都内で開かれた難民研究フォーラムの集まりで、高橋済弁護士はこう語った。
 「今後、この二つの方法によって難民認定申請者を母国に強制送還するというのであれば、入管当局が、本気で迫害の危険にある者を見つけ出す判断力と姿勢を持たない限り、強制送還によって命を落とす者が無数に出る可能性があるのです」
 母国に帰れず、4回目の難民認定申請を行っているアフシンさんが切望するのは、1回の難民認定申請で公正な判断が下るシステムだ。それは世界の政治状況等に精通した第三者機関による難民審査にほかならない。

写真=入管による人権侵害を訴え、東京・港区にある東京出入国在留管理局前でデモをする若者たち

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