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第12回 健康保険証のない外国人を医療につなげる

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 日本にはさまざまな事情で暮らす、いわゆる「非正規滞在の外国人」が大勢いる。しかし、日本政府は彼らの個別の事情を考慮せず、既に「出入国管理及び難民認定法」(入管法)上の退去強制令書が出ていることを根拠に、法務省・出入国在留管理庁(以下・入管)の収容施設に無期限で長期収容したり、強制送還を行ったりしている。「非正規滞在の外国人」への人権侵害を考える連載第12回は、前回に続いて「仮放免」(注)が認められた人々(以下・「仮放免者」)らの命を守る活動をしているNPO(特定非営利活動)法人北関東医療相談会(後藤裕一郎理事長/通称アミーゴス)の支援活動を紹介する。

 アミーゴスが活動の柱にしている「無料健康診断会」は、健康保険証を有していない「仮放免者」など、「非正規滞在の外国人」や日本語が分からないために病院に行けない外国人等が対象だ。お金がなく、病気になっても医者に診てもらうことができない彼らのために、病院などを実際に借り切って、有志の医師、看護師、医療ソーシャルワーカー、検査技師らが健康診断を行う、というものである。
 検査項目は、①問診②身体測定③尿④血圧⑤血液⑥胸部レントゲン⑦診察⑧子宮頸がん(希望者)などで、通訳者を介する使用言語は17に及んでいる。
 昨年は360人が受診した。その診断結果や、また個別の医療相談から推察されることは、経済的な貧しさと、将来が見えないことから派生する強度のストレスが精神と身体の両方に深刻な影響を及ぼしているということだ。うつ的な精神症状が多く見られる上に、ストレスからくる内臓(胃腸など)の病気を患っている者も多く存在するという。
 さらに生活に困窮している彼らは、強いストレスに加えて、日々の食事の栄養バランスや健康面に配慮できずに、常に安い食物ばかりを選択することから、糖尿病や高血圧、高脂血症といった成人病の罹患率が高まっていることが指摘されている。
 こうした病者が慢性的に増加している要因には、入管収容施設での無期限・長期収容、そして就労ができないという「仮放免者」の貧困を〝強いられている〟現実があるのだ。
 
入管収容施設で発病

 難民認定申請をしたり、配偶者ビザの申請などを行ったものの、在留資格が得られず、入管収容施設に収容された場合、被収容者は収容から約6カ月でうつ症状が出てくるという。
 本連載第3回で紹介した難民認定申請中のイラン人、アフシンさんは、入管収容施設にいた4年もの間、命の危険がある母国に強制送還されるかもしれないという恐怖心を常に抱き、遷延性うつ病や、心房細動・慢性心不全を発症した。しかし、入管収容施設では、治療は施さない。応急手当をするだけだ。そして〝末期症状〟になった時に、「仮放免」を認め、入管収容施設の外に出す、というのが〝常とう手段〟なのだ。
 ところが、「仮放免」中は、就労は禁止、健康保険にも加入できない。前述のアフシンさんの場合は、心臓手術に実費810万円がかかると言われたという。だが、手術するための費用を捻出するすべはなく、病状は日増しに悪化していく。
 アミーゴス事務局長で、理事も務める長澤正隆さん(さいたま教区終身助祭)はこう話す。
 「入管は、わざわざ健康な人を長期にわたって収容し、彼らの健康を害して病気にさせています。しかし、収容施設内で彼らに死なれては困るので、病気になってしまった人たちを『仮放免』という形で外に出すのです。『仮放免』では、働けないし、健康保険にも加入できないから、医療費は実費(100%)を請求される。ある外国人は入管に収容されたことで、統合失調症やうつ病を発症した。病院に1回行くと、薬代も含めて平均2万円(実費)ほどかかる。そんなに費用が高くかかるなら病院には行きたくても行けないのが現実で、病気は重症化してしまうのです。これは誰が見ても、明らかに基本的人権と生存権の侵害です」

無料低額診療を

 そのためアミーゴスでは、健康保険証のない外国人たちが命を落とすことがないように、資金集めに日々奔走する。そして医療費支援を募り、医療制度を学びながら、無料または低額で治療・手術をしてくれる病院等を探す活動を続けているのだ。
 「日本には生活困窮者のための『無料低額診療』という制度がありますが、それは病院の母体が社会福祉法人の場合、免除されている所得税を生活困窮者の医療費に回すという仕組みになっています。しかし実際は、病院側はなかなかこの制度を使いたがらない。そこで、外国人たちがこの制度を利用して診療や手術が受けられるように、アミーゴスでは病院側に粘り強く交渉して、理解を求める取り組みも継続的に行っています。あるペルー人は結腸がんになってしまったのですが、病院側との交渉を重ねたところ、病院側は実費で300万円かかる手術を引き受けてくれたのです」
 長澤さんが、無料健康診断会を始めたのは23年前のことだ。きっかけは、あるフィリピン人男性から「胃がんで手術をしなければならない」との相談を受けて、群馬県内の病院に入院する手続きを手伝ったこと。ところが手術が手遅れだったことから、彼は3日後に亡くなってしまった。その男性は在留資格が切れていた「非正規滞在の外国人」。その時、長澤さんには強く疑問に感じたことがあったという。
 「在留資格のない人たちが医療を受けられずに、母国の家族に会うこともなく、また看取られることもなく、孤独にさみしい状態のまま死んでいっていいものなのか?」
 今秋の臨時国会で、政府は入管法の〝改正〟案を提出する予定だという。その法案の中には、退去強制令書が出たものの、母国に帰ることを拒否する外国人に対しては、一定の要件の下で罪に問える「退去強制拒否罪」(仮称)を設置している。それと同時に、そうした外国人たちに、衣食住の支援や医療等の援助をすることは「退去強制拒否罪」の共犯になり得るという内容だ。
 「この法案が通れば、私たちはまっ先に捕まるでしょうね。でも、キリスト者にとって大事なのは、共感と共苦の姿勢。苦しむ人と共に苦しんで生きる。そこに主イエスが共におられる、ということを私たちは忘れてはならないと思っています」
 【注】「仮放免」とは、「非正規滞在」となった外国人に対して、入管が入管の収容施設外での生活を認める制度。しかし、「仮放免」の間は、就労が禁止され、また健康保険にも加入することができない。

栃木県内の病院を借りて開催した「無料健康診断会」

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