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第49回 「仮放免」と子どもたち

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㊾ 「仮放免」と子どもたち
(カトリック新聞 2021年11月21日号掲載)

日本にはさまざまな事情で暮らす、いわゆる「非正規滞在の外国人」が大勢いる。しかし、日本政府は彼らの個別の事情を考慮せず、既に「出入国管理及び難民認定法」(入管法)上の退去強制令書が出ていることを根拠に、法務省・出入国在留管理庁(以下・入管)の収容施設に無期限で長期収容したり、帰れない重い事情のある者たちの強制送還を行ったりしている。「非正規滞在の外国人」に対する、人権侵害を考えるシリーズ第49回は、「仮放免」(入管収容施設外での生活)という入管制度が子どもたちに及ぼす影響について。

本連載で度々紹介してきたNPO(特定非営利活動)法人北関東医療相談会(後藤裕一郎代表理事/通称・AMIGOS(ァミーゴス))が11月3日、東京・千代田区の麹町教会で「第62回医療相談会」を開いた。
都内でこの「医療相談会」を開催するのは初めてのことだったが、参加者は予想を2・5倍以上超える156人。その約70%が、「仮放免」等の「在留資格がない外国人」だった。
難民認定申請者など「在留資格がない外国人」は、入管施設に「収容」されるか、あるいは「仮放免」となって、入管収容施設外での生活が認められるか、のどちらかである。
しかし、「仮放免」となれば、①就労は禁止、②国民健康保険への加入は認められない。無保険だと、医療費は100%支払わなければならない。時には200%から300%の医療費を請求されることもある。
AMIGOSは、無保険で医療が受けられない外国人を対象に定期的に無料の「医療相談会」を開催している。病気の早期発見・早期治療につなげ、また医療費を全面的に負担し、「命」を守る取り組みを続けてきた(本連載第38回他)が、今回、東京で開催した「第62回医療相談会」で注目された点は、子どもの数が多かったことと、「小児科」の相談デスクが設けられていたことだ。

子ども自身も体の悩み抱えて

「小児科」に相談に来た小学5年生のある少年は、難民認定申請中で「仮放免」の母親に付き添われていた。
「医療相談会」に来た理由について、少年は、「僕、吃音(きつおん)があるから」と答えた。そして、学校生活について尋ねると、こう話した。
「吃音が出て、早くしゃべれない。それなのに、先生が授業中に『うまくしゃべれないのは分かってる。でも早くしゃべろ』って、僕をせかせる。先生は本当にいじわる。それで、同級生も吃音のことでからかってくる。だからずっと前から、病院に行って相談したかったけど、(「仮放免」で保険がないから)行けなかった。今日は、吃音についていいアドバイスが聞けて、うれしかった」
少年の顔に、一瞬笑みがこぼれ、「吃音のグループにつながりたいけど、どこにあるのかな」とつぶやいた。
一方、その少年の母親には、うつ症状が見受けられたが、大きな要因は「仮放免」で就労が禁止され、子どもたちの教育費等が支払えないことだった。
今は、中学2年生になる娘の公立学校からの〝督促状〟に頭を痛めている。母親が見せてくれた〝督促状〟には、教材費・学年費・給食費等の諸経費として7万円以上を請求する内容が記されていた。既に納付期限は過ぎており、母親は途方に暮れていたのだ。
「就労を禁止」している「仮放免」制度は、子どもを貧困に陥れ、子どもの「教育を受ける権利」まで脅かすことになる。そのためAMIGOSでは、「仮放免」でも使える制度の一つとして「就学支援」の強化にも力を入れている。
AMIGOS事務局長の長澤正隆さん(さいたま教区終身助祭)は、「医療相談会」に来る外国人の共通点をこう話す。
「共通点は、うつ症状があることです。お金がない。家賃も払えない。そんな状況に悩まない人はいません。在留資格がないために、公的サービスからも排除され、最低限の生活保障もない中で、心身共に危機的状況に陥る。そもそも医療というものを、在留資格の有無で線引きすること自体が問題です」

在留資格ない夫と国際結婚した場合

来場者の中には日本人女性の姿もあった。夫は「仮放免」中の難民認定申請者で、2人の間には3人の子どもが生まれたが、それでも入管は、夫に在留資格を与えてはくれない。その日本人女性は、インタビューに答え、子育ての現状をこう話してくれた。
「2人の子どもには発達障害があり、末の子どもはダウン症です。3人とも日本国籍ですが、保育園への入園が認められません。理由は、夫が〝健康〟だから。夫が『仮放免』で収入がなくても、〝健康〟であれば、子どもたちの入園要件は満たしていないと言われてしまったのです」
その日本人女性は、「いつか夫が入管施設に収容されるのではないか」という恐怖と不安に常にさいなまれているという。
「収容」か「仮放免」かは、入管の裁量権。そこには、確たる理由や根拠はない。入管の〝さじ加減〟で、家族の運命が決まってしまうのだ。
「仮放免」の延長手続きに行った入管で、突然「収容」されたという難民認定申請者等は実際に数え切れないほどいる。そのため、父親が入管に行こうとすると、「パパ行かないで」と泣き叫ぶ子どももいると聞く。〝外国人排除〟の入管行政は、子どもたちの精神にも大きな影響を与えている。
AMIGOSの「医療相談会」では、病気の人がいれば、紹介状を書き、病院につなげて、AMIGOSが医療費を全額負担する。また専門家による法律・生活・心理相談も行う。そして「医療相談会」が終了した後も、病院と連携して来場者全員の健康診断を実施し、「命」を守る活動を続けている。
長澤さんはこう言い切る。
「大事なことは、『収容』や『仮放免』によって、彼らを病気にさせることではなく、難民としてきちんと認めて在留資格を与えること、あるいは在留特別許可を認めることなのです」
身分を保証されない「仮放免」等の外国人は働けず、健康保険もないため病院にも行けず、病状が悪化するケースが後を絶たないという。また、高額な医療費が支援者の負担にもなっている。

写真=聖イグナチオ教会福祉関連グループも共催した「第62回医療相談会」の受け付けの様子。VIDES(ヴィデス) JAPAN(ジャパン)(運営母体=サレジアン・シスターズ)がランチ等を提供するなど、カトリック教会のネットワークも生かされた

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